「化石燃料発電」「原子力発電」「自然エネルギー発電」、その2

エネルギー問題についてですが、「自然エネルギー」とか「再生可能エネルギー」とかをもっと普及させ、循環型社会を創れば良いのだ。このような社会だって、その気にさえなれば十分実現が可能なはずだ。「有識者と言われる人達」はすぐにこのような発言をします。でもこれって、本当にそうでしょうか?

「言う事」と「実際の行動」のギャップが大きい人、具体的に言うならば、「自分が、日々の生活では資源の無駄遣いを沢山して、文化的暮らしにどっぷりと浸かっていながら」、外部に対しては「省エネ生活は重要だ、資源はリサイクルしなければならない」と主張している人、このような人が沢山いると思います。 言い換えれば「洗う手間を省くのだ」と言って、使い捨て食器を大量に使っているような人達です。このような、「自己矛盾」を意識することなく「省エネ、省資源を叫んでいる事」それこそが問題だと私は思います。もしそれらの人達が、「自己矛盾を抱えている事には目をつむり、自然エネルギーを崇拝している人」だとしたら、それは「偏重した自身の知識」が「自己を正義の味方」だと思い込ませているような、単なる「幻想崇拝者」に過ぎないと、私は考えています。

「エネルギー保存の法則」と言うのを「物理」の時間に教わりましたが、エネルギーを生み出す事は副産物である「ゴミ」を生み出し、「エネルギーロス」を発生させるのです。「パワーを生み出す装置」を造るは相応のエネルギーが必要だし、「高密度の高品質エネルギー源」を生成するには多くの「エネルギーロス」を考えなくてはなりません。それを計算に入れず、その装置が発生するパワーだけに注目し評価する事は問題です。最たる例が「電気自動車は、全く炭酸ガスを出さないから理想的な車だ」とする考えです。電気自動車で使う電気がどうやって作られるのか?それを計算に入れていないのす。エネルギー保存則を考慮に入れて、「システム」として総合的に捉えないと、危険な「落とし穴」に陥る危険があります。現代社会は多種多様の分野が複雑に絡み合っていて、単純に一方向からの視線だけで見ると、大きな問題点を見落とす結果となります。

良く聞く話の中に、「これまで電力会社は隠してきたけれど、原子力発電なんかしなくたって、十分に発電量を賄えるのだ」と言う事柄があります。そんな事は当たり前の話で、原子力発電「賛成派」だって知っています。「原子力発電」の分を「化石燃料」で発電すれば良いだけの話です。「化石燃料発電」をどのようにして減らそうかを議論している時に、そんな当たり前の話をしたって、何の意味を持たないのです。このように反発すると、それなら「太陽光発電」だって「風力発電」だってあるではないか、とこれらの「知識人」は言いますが、大半の自然エネルギーは「お天気任せ」の「不安定エネルギー」なのです。不安定な発電所には「バックアップの発電所」が必要です。それは今の所「化石燃料発電所」「原子力発電所」「水力発電所」以外には有りません。但し、水力発電所は貯水量の制約を受けてしまいす。そして、未だに太陽光発電はコストが非常に高いのです。知識人は「コストの問題は技術が進歩すれば解決できる」なんて簡単に言いますが、技術者が血のにじむような努力を重ねていても、簡単には行かないのです。「技術の進歩は簡単」だと思っているとしたら、「技術者」に対して礼を欠いた考え方になります。

世界中で、技術者、科学者、政治家、多くの知識人が知恵を出し合って、新たな巨大プロジェクトに挑んで来ましたが、大自然の前には歯が立たなかった事もしばしばでした。「自然エネルギーの活用」もその範疇に入り、自然環境を変えてしまうような開発には「特段の注意」が必要で、人智の及ばない影響をもたらす危険が有ります。「恩恵」と「弊害」を予測する事には限界が有ります。

中国の「三峡ダム」がその際たる例です。三峡ダム建設には自然環境の変化に対する多くの懸念が投げかけられ、世界中が注目していました。中国政府内にも反対がありましたが、結局エネルギー確保の重要性が優先され工事が着手されました。そして、中国政府は威信を賭けてダムを完成しました。完成後、発電量は徐々に高められて行き、数年前に32機全ての発電機が稼動し、水力による「世界最大の発電量」を記録しました。この電力量は標準的な原子力発電所10箇所分にも相当するものでした。このダムによる水力発電で、年間5400万トンにも上る「炭酸ガス排出量」の削減が図れる、との試算もありますこのようにして世界最大の三峡ダムプロジェクトは完結したかに見えました。

しかし、多きな問題も発生しつつあります。まず、「ダムの決壊」が懸念されています。一説ではこのダムが決壊すると、長江の出口に位置する大都市「上海」が洪水に見舞われ、二年間は機能不全に陥るとも言われています。ダム湖に流れ込む土砂は膨大で、数十年後には貯水量が半減すると言う説もあります。直近の問題として「ダム湖周辺の崖崩れ」が多発し、住民が避難しなければならない事態もかなり起きています。更に、周辺都市から処理されずに流れ込む「汚水」や「ゴミ」の為に、ダムは「汚水溜め」の体をなしているとの悪口もあります。

自然エネルギーの開発には細心の注意が必要なのです。

次回に続きます。