探し物は何ですか?

♪♪ 探し物は何ですか~?、 ♪♪ 見つけにくい物ですか~?               これは、井上陽水が歌った「夢の中へ」の出だしの歌詞です。

あなたの探し物は何ですか? 簡単に見つかる物なら、熱心に探さなくたって見つかるはずだから、きっとそれは「見つけにくい物」なんでしょうね。 望遠鏡で探しても見つかりませんか?

携帯電話? 車のキー? 使い慣れたメガネ? 読みかけの本? 「さっきまでここにあったのに、いったい何処に行ったんだ!!」 置き忘れたのか? 落としたのか? どこにあるんだ?・・・よくある話です。 「きっと盗まれたに違いない」こう思うようになったら、それは「認知症の始まり」だと言われてます。 誰もそんなもの欲しがらないから、盗みはしません。盗んだってしょうがないでしょう! でも、そう思い込むのが「認知症」らしいです。

だから陽水さんが歌っている「探し物」は「こんなたぐい」では無いはずです。   それじゃ、「あなたは何を探してるんですか?」 「俺が探しているものが何かって~! それが解りゃ苦労なんかしないよ!」こんな訳の解らない事を言う人もいます。 ≪何かを探してるんだけれど、自分が何を探しているのか解らない!≫ この一見「矛盾」しているような、意味の無いような「問題」、私はこれこそが「長い人生で、最大の難問」だと思っています。

「井上揚水」作詞による「この歌の凄さ」はここにあると思います。何を探してるんだか解らないから、それは「見つけにくい」のです。きっと死ぬまで見つからないでしょう、だって「何を見つければいいんだか解らない」のだから。 結局のところ、大抵の人は一生「何か」を探し続けるのです。では、「何か」とは何なのでしょう。 この「何か」とは、「何のために生きているのか?」と言う「哲学じみた問題の答え」ではないかと、私は思っています。

この究極の難問、「答え」を探すのではなくて、「無視」をするために、人々は代案を考えます。 私が探しているものってのはネ~! 「一生の伴侶となる素晴らしい人で~ス」とか、「何でもいいから、世間の注目をあびたいので~ス。その道を探がしてま~ス」とか、「誰よりも幸せな家庭を探しま~ス。何処を探せばいいか教えて下さ~イ」とかね。 もっとも、「俺かい? 俺はそんなシチ面倒くせェ事ァ、どうだっていいんダ。毎日が面白きゃ、それでいいんサ」中にはこんな人もいるでしょうね。

「人生の道」って、どうなってるんでしょうかね?

先日、私のサイフが見つからなくなりました。 会社の中か家の中、どちらかで無くしたに違いないと思ったけれど、思い当たる場所をどんなに探しても見つかりません。現金は大して惜しくはなかったけれど、法人カード2枚、個人のカード2枚、給油カード、ETCカード、免許証、これらが無いと困るし、悪用されたら、なお困る!! 私はかなり焦りました。

カミサンに聞いても「何処で失くしたの?」と言われる始末です。「何処で失くしたのかが分れば、そこに行って拾うよ!」と言い返しましたが、記憶の限りを尽くして、状況を反芻しました。  ≫≫便所に行こうと思って、ポケットからサイフを取り出したのだが、なにも便所に行くのに財布は出さなくてもいいんだ、と気が付いた。そして何かをしたけれど、何をしたのかが解らない。≫≫  これが最後の場面です。そこまで来ると、その先の記憶は途切れてしまうのです。その場面は確かに会社の事務所の中です。だから事務所は何度も探した。でもそこには無かった。 私は「記憶のテープ」を何度も巻き戻して再生しました。でも、いつも同じ場面になると雑音が入って、画像が途切れてしまいます。

私は、頭を冷やしたその翌日、会社の事務所の同じ場所を徹底的に探しました。結局、何と「本箱と、その前に置かれてあった段ボール箱との狭い隙間」、そこの床にサイフは落ちていたのです。

私の推測ですが、 ==その時、犯人はトイレに行きたくなったので、何気なくサイフをポケットから出した。だが瞬間的に、便所に財布は持って行く必要はないのだと気が付き、本箱の棚の上に置いた。だが無意識に置いたので、棚から落ちそうな状態で置かれていた。無意識だから置いた事すら意識に残らなかった。それがチョットした加減で下に落ちた。不運にも、そこには段ボールの箱が置いてあり、細い隙間が出来ていた。サイフはその隙間に落ちたのだ。 犯人は必死で自分のサイフを探した。だが見つからない。 事件の捜査が始まり自分が疑われた、完全犯罪をしたつもりだった。現場検証で事務所のダンボール箱が全て片付けられた。 そこには犯人があれ程必死で探していた財布が、事も無げに落ちていた。サイフの中には、犯人のアリバイが崩れる根拠となる「メモ用紙」が入っていたのだ。完全犯罪にはならなかった。==  これが私が推理した「サイフ消失の謎」と、その「解き明かし」です。全く単純な仕掛けでした。  

サスペンス作家ならば、こんな些細な事を「ネタ」にして「完全犯罪が壊れてゆく台本」を書くかもしれません。

 陽水さ~ん! 私の探し物は「サイフ」でした~! 見つかりました~。