マディソン郡の橋

若い人は知らないかも知れませんが、今から20年くらい前、「マディソン郡の橋」と言う「小説」がベストセラーになり、「映画」も大ヒットしました。          ある、アイオワ州のマディソン郡に住む「平凡な女性」が、たった「4日間の出来事」を何十年も思い出の中に留め、一年に一回だけその記憶が事実だった事を確かめる「自分だけの儀式」を「死ぬまで」続けました。年老いた彼女にとって、その日だけは、彼女の彼氏との「短くても深かった恋」の思い出に浸る「特別な日」でした。彼女が亡くなった時、遺品を調べていた家族がその「小箱」を見つけました。小箱の中には大切に油紙に包まれた、「古いカメラ」と「写真」、そして一枚の紙切れとペンダント、が入っていました。                               映画は、女性の葬式のシーンから始まります。直ぐに、三十年前のあの僅か4日間の出来事に移行します。女性には夫がいましたが、彼女は孤独で味気の無い生活を強いられていました。そこに写真を撮ることを仕事とし、孤独に各地を移動しながら撮影する若くもないカメラマンが彼女の家に現れました。「橋の場所」を尋ねる為でした。出会いの瞬間から、二人は互いに惹かれる何かを感じあいます。 彼女は彼をその橋に案内しました。                  このようにして、ラブストーリーは展開して行きます。           女性の名は「フランチェスカ」、カメラマンの名前は「ロバート」、です。  メリル・ストリーブとクリント・イーストウッドが演じました。                     この映画は大成功で世界中で上映されました。

当時、こんな「カッコイイ」カメラマンになりたい、と思った「写真好き」が大勢いた事でしょう。 私もその一人かもね?                       日常的に、私は写真が趣味だと言っていますが、「自己流」ですし、「写真コンテスト」には全く興味がありません。大体が風景写真ですが、勝手に撮っています。特に「川」や「橋」のある風景が好きで、橋の写真も沢山撮りました。  橋は特別な場所だと思います。川が隔てている「向こう岸」と「こちらの岸」、それを繋ぐ特別な道です。                                ラオスの西縁のかなりの部分はメコン川で、タイとの国境線になっています。そこに何本か架けられている「友好橋」が両国を結んでいます。シンガポールとマレーシアは海峡で隔てられていますが、そこも橋で結ばれています。      マレーシア北部とタイ南部を繋いでいるのも「橋」です。          このマディソン郡の橋は、「ローズマンブリッジ」といいます。屋根が掛かっている橋です。

ところで、「三途の川」に「橋が架かっている」、と言う話を私は聞いたことがありません。でも私は、もし「三途の川」に橋が架かっていて、川を簡単に渡れたらどうなるのか? と想像した事があります。                 もしかすると、この話は「落語」の面白い「ネタ」になるかも知れません。                         「オイ、ハッツァン、向こう岸に冥途が見えるだろう! チョイトこの橋を渡って冥途見物としゃれこもうじゃねえか!」なんてね。             いやいや!今、書こうとしているのはそんなバカげた話ではありません。

この橋はラオスからベトナムへ行く国道に架かっています。このタイプの「古い橋」の中では、非常に立派な方です。

ラオスには橋が余り架かっていませんので、山道は谷を越えられません、だから山を巻くように山肌に沿って道があります。結果として、道は蛇のようにうねって、地図上の距離と実際の距離がまるっきり違います。橋があっても、細い吊り橋が多くて、車は大抵通れません。

今回、何故「マディソン郡の橋」を取り上げたかと言いますと、このストーリーが非常に「甘くて、切ない」からです。現代を生きる人々は余りに「直接的」でして、このような「回りくどくて、面倒な話」は流行りません。       絶滅危惧種かも知れません。 人間、何歳になっても「ロマン」は失いたくないものです。                                例え、「お前は、青臭過ぎる!」と言われようともね。